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第254話

「黒田さん、次はどこへ行きますか?」

その言葉に、弘次は相手を見つめ、その目はまるで「どこに行くかなんて、自分で考えろ」と言っているかのようだった。

運転手は弘次の視線を受け、慌てて唾を吞み込み、しばらくすると弘次が言った。「最も近い病院に行こう」

「はい、わかりました」

目的地を聞いてから、運転手はもう遅れるわけにはいかないと感じて、すぐに車を走らせた。

しかし、車内に弥生がいるので、運転速度をあまり上げられず、ゆっくりと運転していた。

数分後、弘次は手でメガネを直し、感情のない声で言った。「この調子で行くと、病院に着く頃には彼女の怪我が悪化するかもしれないぞ。責任は取れるのか?」

それを聞いて、運転手の顔色が変わった。背中には冷や汗が流れ落ちた。「はい、はい、すぐに加速します」

10分後、車は最寄りの病院の前で停車し、弘次が弥生を抱き下ろした。

弘次が去った後、運転手は自分の額に手を当てた。手を当てなければ気づかなかったが、手には冷や汗がびっしょりとついていた。今日の弘次は重い言葉を一切言わなかったが、その周囲から発する冷たい空気は、運転手を極度の緊張に陥らせていた。

幸い、自分の任務は完了したので、今後のことは病院の医師に任せられる。

......

自分がどれくらい眠っていたのかわからないが、弥生が目を覚ますと、窓の外は真っ暗だった。

頭は重く、何かで叩かれたような痛みがあった。

最初はぼんやりとした表情だったが、突然何かを思い出し、ベッドから飛び起きるようにして起き上がろうとした。しかし、手首に刺さっている点滴の針を引っ張ってしまい、痛みで思わず冷たい息を吐いた。

その音に気づいた弘次が、ソファで静かに座っていたのが急いで駆け寄ってきて、弥生を支えながら看護師を呼びに行った。

その後、看護師が手首の点滴の針を再処置してくれた。

処置中に、弥生は言った。「これ、取れますか?急いで出かけなければならないんです」

「それは……」看護師は弘次を見た。

弘次は軽く笑って言った。「ダメだよ。体調が悪いんだから、残りの2本も点滴を終わらせないと」

「弘次、あなたには感謝してる。でも、私には本当に大切な用事があるの」

「瑛介の祖母の手術のことを心配してるなら、安心して」

弥生はキーワードを聞いて、動きを止めた。「あなた、知ってるの
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